〝くつろぎをデザイン〟す
る日本独自の文化。機能性
を兼ね備えた「畳」の魅力
〝くつろぎをデザイン〟する
日本独自の文化。機能性を兼
ね備えた「畳」の魅力

2019.03.29

日本の独自文化である「畳」。その源流は古事記の時代までさかのぼり、既に平安時代には現在の畳に似た構造で作られていたといわれています。当時は板間に畳を置き、その上に座ったり、寝具を敷いて寝たりしていたようです。

部屋に畳を敷き詰めるようになったのは、「書院造」と呼ばれる空間設計から。鎌倉~室町時代のことです。以降、長らく畳は、日本の住宅には欠かせない建材であり続けました。

また、最近では、災害時に全国の畳店から避難所に新しい畳を無料で届ける「5日で5000枚の約束」プロジェクトで、畳の温かみを再認識するといった事例もあります。

今回はそんな日本の心ともいえる「畳」がもたらす、上質な空間設計について紹介します。

次第に減少する和室

実は、畳の需要は年々減少しています。農林水産省の「特定作物統計調査」によると、主産県(福岡県及び熊本県)における平成30年の畳表(畳の表面部分)生産量は概数で261万枚。平成21年は432万枚だったので、激減といってもいいでしょう。より期間を延ばして、20年単位でみると、畳の国内需要はおよそ三分の一まで低下しているともいわれています。

理由は、言うまでもなく住環境の変化です。今や、床の主流はフローリング。部屋数も限られたなか、和室を作らないマンションも増えています。20代、30代で子どもの頃から都市部のマンションで暮らしていた方の中には、実家に畳が無かったという方も珍しくないはず。

それでも、なぜか旅館などで畳のある部屋に泊まると落ち着くことでしょう。これこそ日本人のDNA!……といいたいところですが、やはりイ草がもつ独特の香りや肌触りが関係しています。

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イ草の機能性と畳の構造

イ草とは畳の材料のひとつ。森林のような清々しい香りを発し、リラックス効果が期待できます。この独特の香りが畳を実感させてくれる大きな要因のひとつであることは、間違いありません。また、内部がスポンジ状になっているので、有害物質や嫌な臭いを吸着する効果もあるそうです。湿度が高いときには湿気を吸い取り、乾燥したときには放出するので、高温多湿の日本の住居にはピッタリな素材なのです。肌触りに関しても、スポンジ状の穴に蓄えた空気はクッションとなり、固すぎず柔らか過ぎない、絶妙の心地よい感触を生み出します。

このように、さまざまなメリットがあるイ草ですが、畳はイ草だけを使って作られるわけではありません。イ草を使って作られるのが畳表(たたみおもて)。畳の表面にあたります。畳はこの畳表と、芯の部分にあたる畳床(たたみどこ)、文字通り畳のふちにあたる畳縁(たたみべり)からできているのです。畳表は経糸(たていと)と呼ばれる平行に張られた糸の列にイ草を交差させながら挟み込んで折られます。この畳表を、稲藁を締め付け圧縮して作られた畳床に被せて、長辺に畳縁を縫いつけたら完成です。

畳の主な原料となるイ草。鼻に抜ける清々しい香りがどこか懐かしさを感じさせてくれるとともに、リラックス効果が期待できる

畳縁はさまざまなデザインがあり、古くは座る人の身分などを表していたそうです。また、畳床に関しては、稲藁の生産量も減っており、稲藁を使わない建材床や藁と藁の間にポリスチレンフォームなどを挟んだ藁サンド畳床などが主流になりつつあります。

ちなみに、畳の寿命は約10〜15年といわれています。メンテナンスの方法としては、5年ほど経ったら、敷き詰められている畳を全て裏返します。この作業は動作の通り「裏返し」と呼ばれます。そこからまた5年ほど経ったら、今度は畳表を交換する「表替え」を行なうことが一般的です。10〜15年経って、畳床が劣化したら、新品への交換を検討したほうがいいでしょう。

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地域によって特性の異なる畳

これまで「畳」をひとくくりにして話をしていますが、実は畳には地域性があることをご存じでしょうか。その違いは、サイズです。大きい順に、京間・中京間・江戸間・団地間と呼ばれています。

京間は最も歴史が古く、室町時代後期から戦国時代が発祥。京都を中心とした関西地方や西日本で使われています。中京間と江戸間は、江戸時代に入ってから。中京間は名古屋を中心とした中京地方で、江戸間は関東を中心に全国的に使われています。そして、団地間は公団住宅に入れるために昭和時代に誕生。狭い部屋に合わせて、最も小さなサイズとなりました。

そして、もうひとつ、半畳サイズで縁のない畳もあります。俗にいう「琉球畳」です。もともとは、沖縄で栽培されていた「七島イ(しちとうい)」という植物を使用した畳を「琉球畳」と呼んでいましたが、今では、半畳サイズで縁のない畳を指すことも多くなりました。

現代の住宅に合ったモダンなデザインの琉球畳の和室。洋風な空間の中に、落ち着きのある和の空間を演出してくれる

琉球畳は和室をオシャレにアレンジできることから、インテリアとしても定着しました。フローリングの一角に琉球畳を敷くといったお手軽リフォームを行なう人や、お手軽に、イ草のラグを敷いてアジアンテイストなインテリアを楽しむ人もいるようです。

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畳でつくる和の空間設計

畳を使った部屋だからといって、全て和テイストで統一する必要はありません。洋風を上手く取り入れることで、和洋折衷のモダンなイメージを与えることができます。

ただし、注意したいのはできるだけシンプルにすること。シンプルな畳の部屋は、茶室を連想させて凛とした清々しい印象を与えます。そのため、ものを置きすぎないこと、あまり背の高い家具を置きすぎないこと。高さを低く抑えると、シンプルで和モダンな和室の空間設計が可能になります。

ちょっと疲れたときなど、ゴロッと横になればリラックスできる畳の部屋。日本人であることを思い出させてくれるくつろぎの空間を、皆さんのお住まいにも作ってみてはいかがでしょうか。

※2019年6月17日、最新の情報に合わせて加筆修正しています

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