「神は水を作ったが、人はワインを作った」
かのビクトル・ユーゴーが遺した言葉の通り、西欧から生まれ、グローバルに広がり続けるワイン。大自然と人間の英知が創り上げた文化として世界的に愛されています。
これまでは「高尚な趣味」として捉えられてきたワイン。フレンチレストランで分厚いワインリストを開き、ソムリエにオーダー。華麗にテイスティングをして、数十年もののヴィンテージを愉しむ……ワインといえば、そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、現在ではワインはフランスやイタリアで親しまれているスタイルのように、日常的に飲まれるものになってきました。日本のワイン輸入量を見てみると、第1位はフランスではなくチリ(財務省 貿易統計 2018年)。スーパーのプライベートブランドにも名品がラインナップされ、コンビニの棚の一角でも存在感を発揮するようになったワイン。今や、高級フレンチレストランだけではなく、家庭でも手頃な価格で入手できるほどにバリエーションが広がってきているのです。
一方、ハイカルチャーとしてのワインのステータスも色あせません。サザビーズ(ロンドンで創業された世界初の美術品オークションハウス)などのオークションでは、ワインの「キング・オブ・キングス」ことロマネ・コンティが1本数千万円で落札されることもあるのは有名な話。ここでは、カジュアルでありながら、プレミアムな魅力をたたえる、文化と技術の結晶――そんなワインの姿をお伝えしていきましょう。
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今さら聞けない「ワイン」の基本知識
まず、ワインとは何か。そもそもの定義から考えていきましょう。ワインは、果実や穀物をアルコール発酵させて造る「醸造酒」の一つ。醸造酒にはビール、日本酒などがありますが、それらとワインの違いは「ブドウのみで造っている」ことです。ビールや日本酒には水などを加えるという工程がありますが、ワインはブドウのみから造られるため、ブドウのクオリティが生命線になるのです。

しかし、ブドウのみから造られる=単純ということではありません。原料になるブドウの品種、そのブレンドの割合がワインの味のベースになりますし、造り手の方針、感性が味や香りを大きく左右します。気候や土壌が微妙に異なるだけでもブドウの仕上がりは千差万別。わずか数十mという畑の違いで価格が大きく異なることも珍しくありません。また、収穫年もワインならではのキーポイント。天候やさまざまな条件によってブドウの良し悪しには差があり、それが「当たり年」「ヴィンテージ・イヤー」として注目を集めることもあるのです。
このように、幾多のポイントによってワインは差別化され、数百円から数千万円という価格の違いが生まれます。入門はしやすいけれど、無限なほど奥が深い。ワインが多くの愛好家の心を捉えて離さない理由がお分かりでしょう。
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味わい異なる「赤」と「白」
ワインの原料になるブドウには、皮が白い「白ブドウ」と皮が黒い「黒ブドウ」の2種類があります。
白ブドウから果皮や種を取り除き、クリアなブドウジュースにして発酵させたものが「白ワイン」。黒ブドウをつぶして果皮や種ごと発酵させたものが「赤ワイン」です。また、黒ブドウをつぶしてうっすら色づいた果汁を発酵させたり、果皮を早めに引き上げたりして、薄い色の赤ワインに仕上げたものは「ロゼワイン」と呼ばれます。
ワインの味わいは大きく「甘味」「酸味」「渋味」が基本要素になりますが、白ワインは甘味、酸味がメインで、それに渋味が加わるのが赤ワインです。
味の表現にも違いがあり、赤ワインは「ボディ」という言葉で味の深みや口当たりを表現します。ガツンとした重みがあり、コクが深いものは「フルボディ」、柔らかい口当たりで、まろやかな印象のものは「ライトボディ」、その中間に位置し、飲みやすいと表現されるのが「ミディアムボディ」です。白ワインとロゼワインは「辛口」と「甘口」という2種類があり、わかりやすく口当たりが強めに感じる方が「辛口」、甘く感じる方が「甘口」です。
キレのよさで個性が出る白ワインと、複雑で奥行きのある味と香りが持ち味の赤ワイン。長期熟成に向いており、古酒に価値が出ることから、赤ワインが上位のように語られることもありますが、ワインを嗜む上では好みの問題になるでしょう。
ちなみに、レストランやソムリエのテイスティングで、よくグラスを回して鼻を近づけているのを見たことがあると思いますが、あれは「スワリング」と呼ばれる行為。ワインを空気に触れさせることで味や香りをぐっと引き出す重要な役割があるのです。

年代を重ね、食の経験値を高めていくことで、スッキリした白から濃厚な赤へ、そしてまた端麗な白へ……歳を重ねていくにつれて舌に合うワインは変遷し、そして愉しめる幅は広がっていくことでしょう。
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掘れば掘るほどハマっていく「ワイン」の魅力
ワインの味、香りのキーになるのがブドウの品種です。その数は世界で数千とも数万ともいわれますが、覚えるべき品種はそれほど多くはありません。ベーシックな品種をいくつか紹介しましょう。
【赤ワイン】
■ボルドー系
・カベルネ・ソーヴィニヨン
・メルロー
■ブルゴーニュ系
・ピノ・ノワール
赤ワインは重厚で渋味のあるボルドー系、香り高くてエレガントなブルゴーニュ系に分かれます。深く濃く、渋味が強めのカベルネ・ソーヴィニヨン、柔らかくまろやかな味わいのメルローを覚えておきましょう。ピノ・ノワールは色が鮮やかで渋味が少なく、キイチゴやラズベリーなど、赤い果実の香りも感じられる品種。「ブルゴーニュ系ならピノ」と覚えておくとよいでしょう。
【白ワイン】
■シャルドネ
■ソーヴィニヨン・ブラン
白ワインで圧倒的な人気を誇るのがシャルドネ。フルーティーな香りで、熟成するとナッツのような香ばしいアロマも感じられます。キリッとした辛口の白ワインとして、いろいろな料理に合うオールラウンダーな品種です。
ソーヴィニヨン・ブランは爽やかな味わいが特徴。柑橘系のすっきりとした香りだったり、スモーキーだったりと、育った土壌でさまざまな香りがプラスされます。
スタンダードなブドウの品種を覚えたら、次には産地ごとの味わいを比べてみてもよいでしょう。ワインの生産国はフランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガルの「旧世界」、そしてそれ以外の新興国である「新世界」に大きく分類されます。新世界はチリ、アメリカ、オーストラリアを中心に南アフリカ、カナダ、ニュージーランドが台頭。甲州ワインが注目される日本も新世界の一つです。
それぞれ国ごとに傾向もありますが、おおむね旧世界は落ち着いた味わいで飽きない、長く飲み続けられるイメージ。一方、新世界は力強くくっきりした味わいでインパクトがあります。

国ごとの傾向を把握したら、ボルドー、ブルゴーニュ(共にフランス)、カタルーニャ(スペイン)、カリフォルニア(アメリカ)といった産地ごとに好みを探っていくのも一興です。さらにシャトー(生産者、ブドウ園)や生産年にこだわったり、料理とのマリアージュ(相性)を考えたり、黄金色の泡が輝くシャンパーニュに目を向けたりと、向き合い方は人それぞれ。中には、資格をとったり、ワイン会を開催したり、産地を訪ねたりと、さまざまなアプローチでワインを掘り下げる人たちもいます。
時をかけてじっくり熟成していく銘酒のように、一生の趣味として追求していく――ワインにはそんな楽しみ方があるのです。
※2019年6月17日、最新の情報に合わせて加筆修正しています
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