近年、世界では都市部への人口集中や膨大なエネルギー消費、環境問題など、近い将来に起こると予測されている多くの課題を抱えています。そんな課題の解決を目的として、IoT(Internet of Things)をはじめとする先端技術を活用し、「世代を超えて人々が幸せに暮らせる街づくり」を目指す都市政策「スマートシティ」の実証実験が、世界各国で積極的に実施されているのです。
日本国内でも、2010年より神奈川県藤沢市で環境配慮型の街づくり「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下、Fujisawa SST)」と名付けられたプロジェクトがスタート。藤沢市とパートナー企業が一体となり、インフラなど技術起点でなく住む人の暮らしやすさを起点として街をデザインする次世代の取り組みが行なわれています。
今回は、そんなFujisawa SSTの成り立ちやコンセプト、現在街で行なわれている先進的な取り組みなどをご紹介します。
生きるエネルギーを生みだす「Fujisawa SST」とは?
Fujisawa SSTとは、マリンスポーツや景勝地としても有名な江ノ島に程近い神奈川県藤沢市辻堂元町にあるスマートシティです。「サスティナブル」とは「持続可能な」という意味を持つ単語。地球環境を破壊せずに維持・継続できる産業・開発のことを指し、環境への影響に配慮した都市づくりをサスティナブルシティと呼びます。
2010年に藤沢市と企業が基本構想を発表し、「生きるエネルギーがうまれる街。」をコンセプトとして2014年にオープン。オープン後も住民の意見を基にニーズに合った常に新しい技術やサービスを導入し、より暮らしやすい街へと発展し続けています。
「生成・構築期」「成長期」「成熟期」「更なる街の発展」と、段階を分けた街の100年間の成長ビジョンを掲示。あわせて街全体のエネルギーに関する目標を設定し、CO2排出量70%削減、再生可能エネルギー利用率30%以上、非常時のライフライン確保3日間など、自然環境に配慮した街の実現や住民が安心して暮らせる生活環境の構築も目指す、未来を見据えた街づくりを進めています。
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Fujisawa SSTが発信する4つの特長
Fujisawa SSTには、他のスマートシティとは一線を画す4つの特長があります。

①スマートHEMSでエコな暮らし
Fujisawa SSTでは、約600世帯ある全ての戸建住宅に太陽光発電システムと蓄電池ユニットを導入しています。太陽光で発電した電気を家庭で使用したり蓄電池に貯めたりすることで、再生可能エネルギーの利用率向上をサポート。さらにはパナソニックの「スマートHEMS(Home Energy Management System)」で、各家庭のエネルギー情報を集約し、使用状況の見える化を可能に。状況に応じて使用に関するアドバイスを受けることもでき、電気を賢く使用して環境に配慮したエコな生活が実現できるようになります。
②次世代セキュリティ「バーチャル・ゲーテッドタウン」
先進的で豊かな街の暮らしを守るのは、新たなセキュリティのカタチである「バーチャル・ゲーテッドタウン」。ゲーテッドタウンと呼ばれる物理的に街全体を壁やフェンスで囲う従来の方法と違い、目に見えないバーチャルな囲いを街全体に覆うことで、街の安全性を従来以上に高めるシステムです。
加えて、女性や子どもでも安全に夜道を歩けるよう、街中のLED街灯にはセンサーが付いています。人や車が通ると自動的に街灯の照度がアップして、遠くまで明るくなる仕組みです。また、街の出入り口や公園の陰、公共の建物など街中に防犯カメラが設置され、セキュリティ・コンシェルジュの巡回と併せて、街中の死角を無くすよう対策されています。開放的な街並みを維持しながらも、安心・安全に暮らせる街としてデザインされているのです。
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③暮らしをアクティブにする「トータル・モビリティサービス」
カーシェアや車の販売・買取、保険の総合窓口まで。モビリティ(乗り物や移動手段のこと)に関するあらゆる業務をワンストップで任せられる「トータル・モビリティサービス」が設置されています。カーシェアやレンタカーなどの予約は、コンシェルジュが対応。目的地や利用時間、当日の交通量といったさまざまな要因を考慮した上で、カーシェアやレンタカー、サイクルシェアなどの選択肢から最適な方法を提案してくれるサービスです。さらに街中に電動アシスト自転車のバッテリーステーションを設け、自由にバッテリーの交換を可能にするなど、電動アシスト自転車導入の促進でエコにもつながっています。また、Fujisawa SSTオリジナルのID認証カードをかざすだけでレンタルできるなど、利便性も向上させています。
④新たなカタチのご近所付き合い「SOY LINK」
時代とともに失われてきているご近所同士のネットワークを、現代に合ったスタイルで復活させることを目的とした「SOY LINK」。SOY LINKとは、お隣さん同士で醤油(SOY)の貸し借りをするような、かつての日本の古き良きご近所ネットワークから着想を得てつけられた名前です。住人の誰かが持つものやスキルなどの情報を、必要としている人にシェアリングできる「リソースリクエスト」。知りたい・知らせたい情報をリアルタイムで発信できる「ベルリンガー」など、さまざまなカタチで地域とつながることができます。
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世界からも注目されるFujisawa SST
Fujisawa SSTは世界的に先進的なスマートシティとして、各国からの注目度が高まっています。2015年にはフランスのエネルギー・建設関連企業団体が、貴重な“人の住む”スマートシティの運用例として視察。街中の各施設の見学や、担当者によるFujisawa SSTのコンセプト説明を受けました。
翌年には国土交通省主催のカンパニーツアーがFujisawa SSTにて開催。アジア各国の大使館関係者らと活発な意見交換を実施しています。さらに、世界銀行が開催した国際会議のパネルディスカッションにFujisawa SSTのマネジメントの代表が招かれ、国との連携や雇用といった、スマートシティの現実的な課題を各国関係者とディスカッション。世界のスマートシティをリードする存在として、次世代の社会をつくり上げる取り組みの一翼を担っています。
Fujisawa SSTから見える未来の生活
現代社会が抱える未来に向けた課題解決の手段として、期待されるスマートシティ。今も世界各国でシステムの実証実験を通し、実現に向けた取り組みを続けています。自宅で発電した再生可能エネルギーを活用した電気自動車や電動アシスト自転車を使ったエコな暮らしが可能になります。

開放的かつ安全な街の中、近所の子育て世代同士がネットワークでつながり、のびのびと安心した子育てができる。そんな、人にも自然にもやさしい、次の世代につながっていく未来の街ができあがる日は、もう目前に迫っているのかもしれません。
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