未来につながる街づくり。
持続可能な「スマートシテ
ィ」構想とは?
未来につながる街づくり。持
続可能な「スマートシティ」
構想とは?

2019.02.14

みなさんは「スマートシティ」と聞いてどんな街を思い浮かべますか? スマートシティとは、2050年には世界人口の約70%が都市に集中すると予測される昨今、懸念される環境問題やエネルギー不足など、あらゆる課題をテクノロジーの力で解決しようと広がりをみせる都市政策の通称です。

「あらゆる課題をテクノロジーの力で解決」という説明を聞くと、将来的に社会がAIやITなどの力で埋め尽くされてしまう……のようなイメージを持たれるかと思います。しかし実際はそうではなく、人々が豊かな生活をできるよう先進技術を活用してバックアップし、人と人のつながり・思いやりを可視化できる世の中にする。端的に言えば「世代を超えて人々が幸せに暮らせる街づくり」を目的にした都市政策が「スマートシティ」なのです。

テレビや雑誌、新聞などで取り上げられる機会が増え、耳にしたことがあるという方も多いはず。しかし、実際はどのような取り組みが行なわれているのかわからないという方もいるのではないでしょうか。今回はそんなスマートシティの取り組みをご紹介します。

スマートシティの目的とメリット

今、世界では2050年を待たず環境問題やエネルギー不足が日々深刻化してきています。エネルギーの消費が増えると、需要に対して供給のバランスが取れなくなるため、天然ガスや石油、石炭といった化石燃料の価格が上昇します。また、それに伴って地球温暖化が進行するなど、悪循環が生まれているのが現状です。

このままでは近い将来、私たちが普段当たり前に使用しているガスや電気、水道といったライフラインが制限され、日常生活に大きな影響がおよぶ可能性も考えられます。

そんな問題への対策として、太陽光発電や地熱発電、風力発電、波力発電といった再生可能エネルギーを活用し、同時にエネルギーの消費を抑える“省エネな社会”が求められています。この“省エネな社会”を実現するために注目されているのがIoTの技術です。

IoTとは「Internet of Things」の略で、スマートフォンや家具・家電、車など、生活に密着したあらゆるものがインターネットにつながり、互いに情報を交換しながら制御できるよう構築されたシステムのことです。例えば、スマートフォンと家電をつなげた場合、スマートフォン一台でテレビの電源を入れたり、エアコンの温度を変えたりといったことが可能になります。本来は1つの家電に対し1台必要なリモコンの機能をスマートフォンに集約することで、リモコンを複数台持たなくても済む効率的な暮らしが実現します。

スマートシティはこの技術を個人ではなく、地域社会に応用したもの。ただ部分的にIoTの技術を流用するのではなく、私たちの生活に欠かせない6つの構成要素をより効率的なカタチでつなげることで成り立っています。

ウィーン・地域科学センターの研究プロジェクトが発表したスマートシティを構成する6つの要素のフレームワーク

住宅が昼間の明るい時間帯は、電気をあまり使わないと自動で判断し、太陽光発電による蓄電やその分の電気を公共交通機関に使う。電気自動車が街のインターネットとつながり、渋滞を自動で判断して迂回ルートを選択するなど、生活に関わる全てのものが互いに作用し合い、無駄なエネルギー消費を抑えることで環境に配慮した持続可能な社会を実現することがスマートシティの目的です。

こうしたネットワークを街全体に張り巡らせることにより、都市のエネルギー効率が最適化され、住みやすい街へと変化。効率的な都市管理が実現すれば、ガスや電気、水道といったライフラインの行政サービスが向上することも期待できます。

効率的な都市管理という視点においては、混雑状況やエネルギー使用などといったローカルな情報を可視化することで、知りたい情報に即アクセスできる体制が整います。煩わしい情報検索の時間が大幅に削減されることで時間的な余裕が生まれ、心にゆとりを持てることも、スマートシティのメリットと言えそうです。

海外のスマートシティへの取り組み

今、世界規模でスマートシティ化への取り組みが進められています。特に、アメリカやカナダ、ヨーロッパを中心に拡大しているほか、アジア圏では中国や韓国でキャッシュレス化が進むなど、世界各国で「都市のスマート化」が盛んに推進されています。では、そんなスマート化が進む世界各国の都市では、どのような取り組みが行なわれているのでしょうか。一例をご紹介します。

アメリカ

スマートシティ機能の基盤構築を進めるニューヨークでは、2012年から「LinkNYC」というプロジェクトが行なわれています。市内の老朽化した公衆電話をタッチスクリーン付きの情報端末へ置き換えると同時にWi-Fiスポット化する取り組みで、端末ではタッチスクリーンを使って簡単にローカル情報や交通機関の確認ができるほか、携帯電話の充電ステーションとしても利用できます。ニューヨーク市民も観光客も分け隔てなく、リアルタイムに必要な情報を得られます。

オランダ

2009年から「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」を始めています。主にエネルギー消費やCO2排出量の削減を目的とした取り組みで、民間と行政が協力し、2025年までに40%のCO2排出削減を目標に掲げています。電気使用状況が可視化できるスマートメーターの導入や、ビルのエネルギーを管理するシステムなどにより、使用している電力を視覚的に確認することが可能に。さらに、ビッグデータを活用することにより、洪水被災リスクの高い地域を割り出し、国が抱える災害のリスクを軽減するプロジェクトも始まっています。

この他にも世界各国にはスマートシティへの取り組みが数多くあります。例外なく日本でも行なわれており、神奈川県藤沢市の「Fujisawa SST」や千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」など首都圏を中心に広がりをみせています。

スマートシティによって変わる私たちの暮らし

では、スマートシティが実現したら、どのような社会になるのでしょうか。 国土交通省都市局の『スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】』によると生活者の視点から以下の2点が重要だと述べられています。

生活の質を高める余剰時間

スマートシティにおいて、ICT技術が発達することにより、その生活圏内の人々は物理的な距離を超え、情報の収集と共有をリアルタイムに行なえるようになります。

仕事を例に考えると、テレビ会議を使ったテレワークなどの自由な働き方が広がることで、職場との物理的な距離を意識せずとも業務ができる環境が整います。「移動時間」を意識する必要が無くなるため、大きな時間的余裕が生まれるでしょう。

また、渋滞の緩和が進み、完全自動運転の都市交通インフラが実装されれば、仕事のみならず、ちょっとした移動や旅行といった長時間の運転でも運転手も含めた搭乗者が交通状況に関係なくくつろぎながら移動することができます。

 

さらにショッピングにおいては、現在も市場が拡大しているインターネット販売がより便利で身近なものになると考えられます。購入履歴から購入者一人ひとりのニーズを正確に把握し、「おすすめ」を表示することで購買意欲を促進。実店舗での買い物も、キャッシュレス決済の技術によって会計の列に並ぶことなく購入手続きを終えられるようになるなど、スマートエコノミーの観点からも経済的に大きな影響がもたらされます。

そうして生まれた余剰時間は、生活の質を大いに高めてくれることでしょう。

経験の充実を図る場所としての都市

スマートシティにおいて、新たに生まれた余剰時間は、街で実際にさまざまなアクティビティを体験することや家族や友人、恋人、地域の人と交流するなど、実際に自分の身体を動かすことが肝となる経験的な活動に充てることができます。

時間やエネルギーを効率的に使うことによって生まれる時間的余裕。それを利用して自分の趣味や勉強の時間を充実させられるほか、人々との交流の場に参加し様々な価値観に触れることも、生活の質を高める経験になります。

人々の生活を豊かにできる可能性を秘めたスマートシティは、セキュリティの面の脆弱性などまだまだ課題も多く、実証実験を行ないながら少しずつ研究開発が進められている段階です。しかし、有限なエネルギーを効率よく使い、持続可能な都市を築くために、都市を形成する上で重要な考え方になっているといえます。

持続可能で、世代を超えて人々が幸せに暮らせる街づくり構想・スマートシティ。個人だけでなく街全体のつながりを考えることで、街という大きな単位で社会貢献がなされ、永く愛され続けていくのかもしれません。

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