高層オフィスビルが立ち並ぶビジネス街、品川。2020年には品川駅から田町駅間に、約50年ぶりの山手線新駅、「高輪ゲートウェイ駅」が開業します。新駅周辺の広大な敷地では、国内最大規模の開発プロジェクトが現在進行中です。
今、最も注目されている街・品川の歴史を振り返り、その未来の姿を想像してみましょう。
江戸時代から交通の要である品川
東海道五十三次の最初の宿場である「品川宿」は、江戸の出入り口として栄えてきました。当時の浮世絵師・歌川広重は、茶屋が軒を連ね、そこを大名行列が練り歩く様子を作品に残しています。また、交易のため荷を積んだ船が江戸湾を渡る様子が描かれた作品もあり、200年以上前から、品川が陸と海の交通の要であったことが容易に想像できます。

明治に入ってからは、品川は鉄道の拠点としても発展していきます。日本初の鉄道は、1872年9月、新橋駅〜横浜駅間の開業と覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。ところが、実際はこれよりも早い5月に、品川駅〜横浜駅間で仮運転が行なわれています。つまり品川駅は、日本で最も古い駅の一つなのです。
余談ですが、品川駅が位置するのは、品川区ではなく港区というのは有名な話です。本当は市街地に駅を開業するはずだったのが、「鉄道ができたら宿場の商売が成り立たなくなる」という地元住民の反対に遭い、やむを得ず市街地を避けた場所に駅を建設することになりました。これが港区に品川駅がある理由なのです。
さらに空の玄関口としても品川は発展していきます。1931年に開港した羽田空港へのアクセス拠点として、品川駅から京浜急行が空港まで運行しています。時代を経るごとに、陸、海、空の交通の要として品川の重要性はますます高まっていったのです。
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歴史を形作る名建築たち
真新しい高層のオフィスビルに思わず目を奪われる品川ですが、日本を代表する歴史ある名建築も数多く存在します。
1917年に竣工した品川駅の西側にある「旧島津公爵邸」。これは、お雇い外国人として明治政府に招かれたイギリス人建築家・ジョサイア・コンドルの晩年の傑作です。円弧状の美しいベランダが特徴的な旧島津公爵邸は、ルネサンス様式の煉瓦造りの建物。戦後はGHQの管理下に置かれ、米軍の将校宿舎として使われていました。
その後、1961年に清泉女子大学が土地と建物を購入し、神奈川県横須賀から大学を移転させ、現在も大学の本館として利用されています。数奇な運命をたどった旧島津公爵邸は、変わることなく、その優美な姿を今にとどめています。
鹿鳴館、ニコライ堂、三菱一号館など、数々の名建築を世に送り出したジョサイア・コンドルですが、彼の功績はそれだけではありません。工部大学校(現・東京大学工学部)の教授として、東京駅の設計者・辰野金吾、赤坂迎賓館の設計者・片山東熊など、日本建築の黎明期を支えた建築家たちを世に送り出しました。

品川駅の高輪口を降りてすぐに位置する「グランドプリンスホテル高輪」には、コンドルの弟子の片山東熊が手掛け、1911に竣工した「旧竹田宮邸」を見ることができます。こちらも煉瓦造りの荘厳な洋館であり、建物の正面(ファサード)は細部に至るまで優雅な意匠が施されています。旧竹田宮邸は、今では高輪貴賓館という名で結婚式場として多くの人に親しまれています。
ジョサイア・コンドルと、その弟子・片山東熊による歴史ある煉瓦造りの建物は、優雅で格式高い品川の歴史を今に伝えています。偉大な先人たちの建物へのこだわりを、品川という街に見ることができるでしょう。
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東京最大の再開発、新たな街づくりへ
京浜工業地帯に位置する品川は、製造業を中心に発展してきました。三菱重工業、日立金属、ソニー、キャノンなど、多くの名だたるメーカーの本社やオフィスがあります。そこへ1990年代から旧国鉄跡地の再開発によって品川インターシティ、品川グランドコモンズのような大型オフィスビル群が立ち並ぶようになり、日本マイクロソフト、NTTグループ、電通国際情報サービスなどのIT企業も、アクセスの利便性と大規模なオフィス環境に魅力を感じ、品川に集まってきています。
日本屈指のビジネス街として成長した品川には、冒頭で触れたように、2020年の東京オリンピックに合わせ、品川駅〜田町駅間に「高輪ゲートウェイ駅」が開業することが決まっています。

新駅建設に合わせJR東日本は「グローバルゲートウェイ品川」という大規模な開発プロジェクトを発表しました。計画では駅と街全体を一体的につなぐ空間を創出できるように5棟のオフィス・商業複合ビルと、3棟のマンションが建設予定です。
【戸数が増えて収益増、それでも入居者の満足度が向上する理由】
東京オリンピック後も、品川の街は変わっていきます。2027年開業予定のリニア新幹線、その始発駅は品川駅です。地下40mのリニア品川駅の工事は着々と進められています。新幹線、リニアへの乗り継ぎができる品川の利便性、希少性はさらに高まっていくでしょう。
大規模再開発後の品川もきっと、江戸時代の品川宿から変わらず、人と人が行き交うダイナミックで多様な価値観が共存する街であり続けることでしょう。
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