大人の趣味として定番の「家庭菜園」。種苗を販売するタキイ種苗の調査によると、「現在、家庭菜園で野菜を作っている」人が17.5%、「現在は作っていないが、過去に作った事がある」人が30.9%と、日本人の約半数が家庭菜園を経験しており、その満足度はなんと86%に達するのだとか。しかも、未経験や過去に作ったことがある人の38.3%が「(また)やってみたい」と答えているそうです。
では、家庭菜園のどこに人々を夢中にさせる魅力があるのでしょうか? 今回は、そんな家庭菜園の始め方や育てやすい野菜など、家庭菜園の魅力と楽しみ方について紹介します。
工夫や適度な運動が“美味しい野菜”を生み出す
家庭菜園とは、その名の通り家庭で野菜などを作る趣味のこと。一番の楽しみは、育てる過程それ自体にあります。日々成長し、勉強して手を掛け、工夫した分だけ応えてくれる。DIYやプラモデルなどモノづくり系の趣味は数多ありますが、ある意味、その究極にあたるのかもしれません。
また、土いじりで体を動かすことは適度な運動にもなり、リフレッシュにもつながります。心地よい疲れはスポーツなどの趣味とも通じるのではないでしょうか。

趣味として多彩な面を持つ家庭菜園ですが、実益的な面もあります。それは、収穫した野菜を食材として利用できること。実際、葉物野菜の価格高騰をきっかけに、節約するために家庭菜園を始める人も多いのだとか。
経済面以外でも、食の安全・安心を求めたり、子ども達への食育の一環として取り入れられるケースも多いようです。いずれにしろ、自ら育て、収穫した新鮮野菜の味は絶品。その“口福”を味わえることも、家庭菜園の醍醐味です。
作り方“多彩”な家庭菜園
「うちには広い庭がないから、家庭菜園は無理……」と思われるかもしれませんが、野菜を育てられるのは庭だけではありません。家庭菜園の方法は、大きく「庭」「市民農園」「プランター」「室内水耕栽培」の4つに分けられます。
「庭」は、その名の通り自宅の庭に畑を作って野菜を栽培するやり方です。「市民農園」は、自治体、農協、農家、企業などが法律に基づいて開設している農園を利用すること。開設者と利用契約を結んで、貸与された農地で野菜を育てます。愛称は様々で、レジャー農園やふれあい農園、区民農園などと呼ばれることもあります。また、多くは日帰り利用ですが、なかにはドイツ発祥の「クラインガルテン」と呼ばれる滞在型市民農園も存在しています。農林水産省のホームページには、全国の市民農園リストも掲載されているので、参考にするといいでしょう。
庭や市民農園では、まず土壌作りから始めます。その際に必要なのが、農具です。畑を耕すクワや大小のスコップ、畝の表面を滑らかにならすレーキ、雑草を取る鎌、じょうろ、園芸はさみ、バケツ、軍手などは必要最低限で、これに防虫ネットや支柱などの資材、野菜が育ちやすい土壌にするための石灰や堆肥などを準備します。
これらは、ホームセンターや園芸店で揃えることが可能。店員さんに畑の規模や作る野菜などを伝え、相談してみるといいでしょう。また、道具のレンタルがある市民農園もあるので、最初はそういったところを選んでもいいかもしれません。
庭や市民農園は、気候や土壌の質さえ合えば、どんな野菜でも作ることができます。せっかくなら、プランターでは育てるのが難しい根ものや大きめの野菜に挑戦してみてはどうでしょうか。ちなみに、初心者でも作りやすい根ものは、じゃがいもや玉ねぎといわれています。たくさんの種類の野菜を栽培し、特徴を覚えてコツを掴んできたら、キャベツや大根といった大きな野菜に挑戦してみてはいかがでしょうか。
気軽に栽培! 家の中でも家庭菜園ができる時代
「庭や市民農園ほど本格的でなく、気軽に始めてみたい……」。そんな人は、プランター栽培がおすすめです。プランターとは、ベランダなどで植物を育てるための容器のこと。素材・サイズ・形状でいくつかに分けることができます。
例えば、素材はプラスチックやテラコッタ、陶器、木など。それぞれに複数のサイズや形状があり、育てる野菜の種類や設置する場所によって使い分けます。最もベーシックなプランターはプラスチックの長方形。汎用性が高く、さまざまな野菜に対応可能です。

プランターの利点は、やはり手軽さにあります。狭い場所でも始めることができ、広い庭や市民農園と違い、道具はスコップやはさみ、じょうろ、軍手などで十分。また、土壌は畑を耕して作る必要はありません。底に鉢底石を敷き、その上に培養土を被せて肥料などを混ぜ合わせるだけ完成です。ここに支柱を立てて、お目当ての野菜を栽培します。
初心者におすすめなのは、ミニトマトやラディッシュ、万能ねぎ、小松菜といった定番野菜。いずれも日々の料理に使いやすい野菜です。
ミニトマトは小学生の園芸体験でも使われるほど、初心者でも育てやすい野菜です。ラディッシュの日本名は「二十日大根」。その名の通り、最短なら20日ほどで収穫できるため、初めて野菜を作る人でもすぐに収穫の喜びを味わえます。小松菜も栽培期間が短く、厳冬期は寒さ対策をしっかりすれば一年中栽培が可能な野菜です。万能ネギは収穫までに時間は掛かりますが、乾燥にも強く、育てるのが簡単です。
ミニトマトは初心者向けですが、大玉トマトは難易度が高いといわれています。他にも、中・上級者向けには、トウモロコシやスイカ、白菜なども育てるのが難しい野菜とされています。また、畑では簡単につくれる根菜も、プランターで育てるのは大変です。
また、最近、徐々に増えているのが、室内での水耕栽培です。インターネットで検索すれば、種や苗と水を吸い上げるエアポンプ、水を吸い上げる時間を調整する自動タイマー、日光の代わりとなるLED照明などがセットになった栽培キットが数多く売られています。リーフレタスやハーブなどの栽培が一般的ですが、ミニトマトやもやしなどの栽培も可能です。
ユニークなところでは、ペットボトルと水だけで作れる「ペットボトル水耕栽培キット」などもあるので、全く知識はないけれど、家庭菜園に興味だけはあるという人は、こういったものから初めて、育てる楽しみを味わってみてはいかがでしょうか。
“手間”や“想い”が野菜を育む
毎日の水やりや追肥、雑草の除去、虫の駆除など、決して簡単ではない家庭菜園。それだけに、しっかりと育ったときの喜びはひとしおです。複数の野菜を育てれば毎回新しい発見もあり、飽きることなく長く続けることもできます。
まずは、簡単に始められる水耕栽培などから始めてみて、プランター、庭、市民農園へとステップアップするといった目標を立てるのも楽しいもの。老後は、本格的に農業へチャレンジしたくなるかもしれません。
“美味しくなれ”という「想い」を“野菜”という「かたち」に。家庭菜園という趣味を子供たちと楽しみ、想いやかたちを次の世代へ受け継いでみてはいかがでしょうか。
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