個人と法人の違いとは? 学んで得する賃貸アパート経営の手引き
2019.08.22

アパート経営をする際に、「個人経営(個人事業主)でいくか、それとも法人化すべきか」という悩みは、誰もが一度は通る道です。個人経営では、種類によっては認められない経費や超過累進税率の適用などの制約があり、思うように経営できないこともあります。法人化することで、これらの制約が緩くなり、節税対策や規模の拡大など、大きな事業計画を立てて経営することが可能になりますが、その分、法人税などの固定支出も増えます。

では、どちらがより安定した経営を行なうことができるのか。今回はそんなアパート経営における個人経営と法人経営のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

最大の違いが表れる「融資」と「税金」

個人経営と法人経営。実は、“不動産を所有することのみ”に関しては、大きな違いはありません。どちらの経営方法が自分に向いているかを判断する最大のポイントは、「融資」と「税金」です。

「融資」について

まず、融資について見ていきましょう。大半の金融機関が提供する不動産担保ローンでは、種類にもよりますが限度額に厳密な規定はなく、「年収」「返済比率」「貸出制限」「担保評価」の4つの要素から算出されることが一般的です。個人経営の場合と法人経営の場合では融資限度額に違いがあります。同じ資産状況の場合、条件によっては法人のほうが融資限度額が高くなることがあります。

自身の経営状況と収支のバランスを考え、個人経営のまま続けるのか、法人化するのかを判断する

「税金」について

次に、税金についてです。個人経営では、5年以内に不動産を売却した場合、短期譲渡所得という扱いになり、所得税・住民税・復興特別税を合わせると約39%かかります。5年以上で売却する長期譲渡所得では税率が約20%なので、実に、倍近くの差があるのです。その上、個人経営は分離課税なので、経費を合算して節税するということが基本的にできません。短期譲渡所得の可能性がある場合は、それだけ高い税金を払うというリスクがあることを覚えておくとよいでしょう。

一方、法人の場合は、短期・長期のどちらでも、税率は約35%(年間利益800万円までは23%程度)です。この税率を比較すると、長期譲渡の際は税率が高く感じるかもしれませんが、法人の場合は年間利益に対する課税となるので、経費と合算して計上し、節税することも可能です。

まとめると、短期譲渡所得の場合は法人経営が、長期譲渡の場合は個人経営が有利に働くということがわかります。自身の経営状況に合わせ、最適な方法を選択することをおすすめします。

倒産防止共済で節税対策を

節税対策をするにあたり、経費をどのように計上するかが重要です。経費として計算できる項目は、法人のほうが多いので、それをメリットと見ることもできます。

例えば、法人であると、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入することができます。毎月の掛け金の上限20万円を納付すると、年間240万円を経費として計上できるため、節税対策として多くの不動産投資家が加入しています。240万円は共済にプールされ、40ヵ月以内に解約すると元本割れすることがありますが、40ヵ月以上経過してから解約すると元本100%で戻ってきます。解約するタイミングはいつでも大丈夫です。

ただし、解約して戻ってきたお金は利益になります。利益には税金がかかるため、解約するタイミングには注意が必要です。なお、個人でも似たような仕組みの小規模企業共済があり、毎月の掛け金の上限は7万円で、年間84万円を所得控除として計上できます。

「確定申告書」と「決算報告書」

毎年の確定申告では、個人は確定申告書の提出で問題ありませんが、法人は決算報告書の提出が必要です。金融機関が投資物件をスコアリングする際、決算報告書のほうが細かく経営状況を把握できるので、経営状況が良いと判断されれば、融資限度額が増えることもあります。

確定申告書の作成は、会計ソフトを使って自身で処理をするケースもありますが、慣れている方は例外として、かなりの時間と労力がかかります。税理士に依頼すると通常5万円程度の作成料で済むので、専門家に任せるほうが早く処理でき、なにより安心です。


経営状況を細かく確認できる決算報告書。金融機関からの信頼が得やすくなり、融資限度額の増加によって更なる事業拡大が可能になることがある

連帯保証人に関しても、個人と法人で異なります。個人経営では、通常、配偶者や親族が連帯保証人になる場合が大半です。しかし、配偶者の承認が得られなかったり、借主が独身だったりする場合もあります。その場合は、団体信用生命保険に加入することで連帯保証人の代わりとすることができます。法人の場合は、借り主本人が連帯保証人になれるため、配偶者の承認や団体信用生命保険への加入などの必要がありませんが、金融機関によっては求めてくる場合もありますので注意が必要です。

事業規模の拡大で判断する

一般的に、不動産所得が800万円を超えた時が法人化を検討するタイミングといわれています。個人に対する所得税率は累進課税のため、最大で45%まで上昇します。ここに住民税10%が追加されるため、最大で55%もの課税が発生するのです。

個人所得が695万~900万円の間では、所得税率23%+住民税10%で43%の課税が適用されます。一方、法人に対する法人税は、利益が800万円以上の場合は一律36%で計算され、その後はどれだけ利益が出ても36%から上がることはありません。このように、個人と法人では所得・利益に対する税率が違います。ここまで、税金や融資の面を中心に、個人経営と法人経営の違いを見てきました。税率を抑えたり、融資の限度額が大きかったりと、一見すると法人経営のほうがメリットがたくさんあるように見えるかもしれません。ですが、法人が存続する限り、年間利益が赤字でも均等割として年間で約7万円の出費がかかります。その他にも、会計処理を年間通して税理士に依頼する場合は30万円以上かかるのが相場です。

また、個人経営の場合、納税後の資金をある程度自由に使用することが可能ですが、法人経営の場合は、法人の利益に対応する経費しか使用できません。法人から個人に資金を移動するためには給料を出すことが一般的です。給料を出す場合、法人は経費が増えるため税額は下がりますが、個人の給与所得に税金がかかります。加えて給料に応じた社会保険料の負担が法人と個人の両方にかかるケースも念頭に置く必要があります。いくら給料をとるか何人に給料を払うかなどを考慮してシミュレーションを行ない、法人化を検討する必要があります。


アパート経営において最も大切なのは“身の丈にあった経営を行なう”こと。乱立させず、キャッシュフローの確保ができてから、慎重に経営を行なうことが重要だ

このように、法人化することは、使えるお金が増える分、出ていくお金も増えるということです。借入額を増やして、不動産投資を拡大していきたいという人は、融資限度額の大きい法人のほうが向いていると言えるでしょう。反対に個人経営は、事業を拡大するというよりも、ゆっくりと不動産投資を行なっていく場合に適しています。どちらの経営方法を選択するかは、不動産投資のゴールを何にするか、明確にすることで判断できるでしょう。

資産状況によっても不動産投資のゴールはさまざま。今後の計画に悩んでしまう場合は、アパート経営のコンサルティングから建築・管理まで手掛ける会社に相談することをおすすめします。

監修=紺野健太郎

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