今、空前のサウナブームが訪れています。雑誌やテレビ番組で特集が組まれるほか、火付け役の一つであるタナカ カツキ氏の漫画『サ道』は、なんとドラマ化までされ、続編やスペシャルドラマも放送されるなど大きな人気を誇っています。
サウナ愛好家を指す「サウナー」という呼称は一般にも広まり、熱いサウナと水風呂などの冷たい場所を往復することで心身が究極にリフレッシュした状態をあらわす“ととのう”という表現は「ユーキャン新語・流行語大賞2021」にノミネートされるなど、その知名度は年々上がっています。
ブームに合わせてサウナ施設も数多く新規オープン。さらに身近に、気軽にサウナを楽しめるようになり、サウナデビューをする人も増えてきています。
そこで今回は、サウナの歴史から正しい楽しみ方、マナー、おすすめの有名サウナまで、基礎的な知識を紹介。サウナが持つ魅力に迫ります!
オリンピックから広まったサウナ

広く知られていることですが、サウナ発祥の地はフィンランド。その歴史は2000年以上とされており、今でも多くの家庭に自家用サウナがあるそうです。街中にも数多くのサウナが存在し、大事な商談などが行われることも。まさに、裸の付き合いです。
さらには、観覧車のゴンドラがサウナになっている「SKYSAUNA」や、映画「かもめ食堂」のロケ地としても知られ、サウナとプールを行き来できる「Yrjönkatu Swimming Hall(ウルヨンカトゥ スイミング ホール)」、水風呂の代わりに海に入ることができる「Loÿly(ロウリュ)」など、日本では体験できない、サウナ大国ならではの変わったサウナも多くあります。
そんなサウナを愛するフィンランド人は、オリンピックの際に選手村にもサウナを持ち込みました。
その結果、1936年(昭和11年)のベルリンオリンピックでヨーロッパに、1964年(昭和39年)の東京オリンピックで日本に広まるきっかけとなりました。

ヘルシンキにある観覧車のゴンドラがサウナになった「SKYSAUNA」。4~5人乗ることができ、5~7分ほどで一周する
ちなみに、日本初のサウナといわれているのは、かつて銀座に存在していた入浴レジャー施設・東京温泉に設置されたサウナ。これは、1956年(昭和31年)のメルボルン五輪に出場したクレー射撃選手・許斐 氏利(このみ うじとし)氏が選手村で見たサウナ施設に触発されて作ったといわれています。
乾式サウナと湿式サウナ
サウナには大きく分けて、乾式と湿式の2種類があります。
乾式は、湿度が10%前後と低く、温度が100℃前後と高いのが特徴。一般的には「ドライサウナ」と呼ばれ、薪やガス、電気を使ったサウナストーブで室内を暖めます。スーパー銭湯や銭湯などに多く設置してあり、日本で最もポピュラーなサウナです。

ちなみに、サウナストーブで熱せられたサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させる蒸気浴のことを「ロウリュ」といいます。
最近ではこの蒸気をタオルや団扇などで扇いで熱風として利用者に送り、一時的に体感温度を上げている「アウフグース」も有名で、こちらはドイツ式のロウリュです。
日本独自の表現として“熱波”とも呼ばれ、サウナ好きが高じて“熱波師”という仕事に就く人も増えています。
一方、本場フィンランド式はサウナストーンにかける水にアロマオイルを混ぜ、心地よい香りが漂う空間でじっくりと蒸気浴を楽しむことが一般的です。

また、フィンランド式サウナでは“ヴィヒタ”というアイテムも使われます。
“ヴィヒタ”とは白樺の枝葉を束ねたもので、サウナに入る際に水に浸したヴィヒタで全身を叩くことで、血行促進・発汗作用などの効果があります。
また、森林浴のような白樺の爽やかな香りが広がり、リラックス効果もアップ。本場のサウナ体験を楽しめることから日本国内のサウナーの間でも近年人気が高まっています。

さらに、“テントサウナ”も人気が高まっています。
テントサウナは近年のサウナブーム、そしてアウトドアブーム・キャンプブームの波に乗り広く認知されるようになりました。
また、新型コロナウイルス感染症の対策が必要な中、サウナを閉鎖する施設も増えたため、プライベートなスペースでサウナが楽しめるとして人気に火が付きました。
耐熱性のテントの中で薪ストーブを炊き、テント内を高温にすることで簡単にサウナを作り出すことができ、持ち運びも可能なので、キャンプ場や河川敷など大自然の中でサウナを楽しめることが最大の魅力です。水風呂の代わりに川に入るなど、大自然の中で入るテントサウナならではの楽しみ方も人気な理由の一つです。

湿式は霧(ミスト)や蒸気(スチーム)を使うことで、湿度を高くしていることが特徴。室温は40〜60℃と乾式に比べると低温で、「ミストサウナ」や「ドライサウナ」が湿式の代表格です。こちらは、肌に潤いが出るなどの理由から女性にも人気です。
効果的なサウナの楽しみ方
乾式と湿式、どちらのサウナも目的は体を温めること。その結果生まれる効能はさまざまで、血管の拡張による血圧低下や血行促進による肩こり解消、温度刺激による自律神経の調節力向上、発汗による老廃物や疲労物質の排出、ストレス解消などが期待できます。
気になる入浴時間ですが、一般的には8〜12分が目安とされています。ただし、室温やサウナ経験、健康状態などを加味して、時間にとらわれ過ぎないようにすることが重要です。
サウナ室内は、低いところより高いところの方が高温。最初のうちは、低いところに腰掛けて、慣れたら上段に移動しましょう。
汗をたくさん出したいなら、先に湯船で体を温めておけば効果的。また、リラックスしたいときは、室温が低いミストサウナなどがおすすめです。

先に湯船に浸かることで血行が促進され、より高い発汗作用が期待できる
サウナといえば水風呂という人も多いはず。ドライサウナで体を温め、水風呂で冷まし、休憩する。このセットを繰り返すのは、基本的な流れの一つです。
最近、よく耳にする“ととのう”という状態は、この流れを繰り返していると何度目かの休憩の時に陥るといわれています。
漫画『サ道』では「サウナトランス」と表現されており、体がしびれてきてディープリラックスの状態になり、多幸感に包まれるそうです。サウナーはこの多幸感を求め、サウナに足しげく通うのだとか。
とはいえ、誰もが必ず“ととのう”わけではなく、また、そのために無理をしてしまうと健康に良くありません。過ぎたるは及ばざるが如しです。
初心者が気をつけたいのは、知らないうちにマナー違反を犯すこと。といっても、常識を守っていれば大丈夫です。例えば、サウナに入る前は体の水滴をしっかりと拭く。ビチャビチャのタオルは持ち込まない。室内でタオルを絞るなんてことはもっての外です。また、室内に入るときは、熱気を逃がさないように、ドアを素早く閉めましょう。
水風呂にもマナーがあります。いきなり飛び込むのはマナー違反。シャワーなどで汗を流してから入りましょう。また、水風呂では潜るなど他人の迷惑になる行為は厳禁ですよ。
一度は行きたい名物サウナ
サウナは街中の銭湯やスパ施設など、どこにでもあります。初心者はまず、最寄り施設のサウナに足を運ぶとよいでしょう。だんだんとサウナにはまり、サウナーになったら、名物サウナに遠征したくなるはず。
サウナ しきじ
最も有名なのは、静岡県静岡市にある「サウナ しきじ」。いわゆる昔ながらの昭和感が漂うサウナですが、“サウナの聖地”とも呼ばれる有名店です。サウナの室温は110℃と超高温。火照った体を癒す水風呂は“奇跡の水風呂”と称され、ミネラルが豊富な天然水を使っています。この天然水の水風呂が名物で、日本中のサウナーが憧れる場所となっています。
タイムズ スパ・レスタ
水風呂でいえば、池袋の「タイムズ スパ・レスタ」もユニーク。男性浴室の水風呂の温度は低めの16℃なのですが、傍らの容器にはさらに温度を下げられるよう氷が準備されています。
また、月に数回、「エクストラコールドバス」という極寒風呂に変身するイベントも実施されており、このときは10℃未満まで水温が低下。冷たさにこだわる人は、ぜひ体験してみてください。
スパメッツァおおたか 竜泉寺の湯
サウナブームの中で誕生し、大人気となったのが「スパメッツァおおたか 竜泉寺の湯」。"今行くべき全国サウナ"『SAUNACHELIN(サウナシュラン) 2022』で全国1位を受賞するなど、今もっとも“アツい”サウナと言えるかもしれません。
こちらの名物は「ドラゴンサウナ」。サウナヒーターの世界シェアNo.1を誇るフィンランドのメーカー「HARVIA」のストーブを使用しており、5台並んだストーブが10分おきに自動でロウリュを始めます。さらに毎時00分には、5台のストーブが一斉にロウリュを開始する「ドラゴンロウリュ」を体験することができ、その光景は圧巻です。
健康的で上質な空間を求めて

以前は、おじさんの趣味という印象が強かったサウナ。最近は、スタイリッシュなスパ施設も増えてきており、温泉・サウナ・岩盤浴を楽しみながら食事やお酒、ボードゲームや漫画なども楽しめる複合施設も人気で、若者や女性、カップルでも楽しめるようになってきました。
また、スーパー銭湯なら家族連れでも満足できるでしょう。健康効果も期待でき、ストレス解消にもつながるサウナ。そんな上質な空間を求め、皆さんも“サウナー”を目指してサウナデビューをしてみてはいかがでしょうか?
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