耐震等級とは? 等級1〜3の違い、取得するメリット・デメリットを解説
2024.02.29

最も重要な住宅性能のひとつに「耐震性能」があります。目に見えない耐震性能を数字で表して指標とするのが「耐震等級」です。地震大国といわれる日本で長く安心して暮らすために、覚えておきたい耐震性能の基準と、それらの基準が住宅建築にどのような影響を与えるかをまとめました。

耐震等級とは

耐震性能を表す指標である耐震等級は、2000年施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で定められました。品確法とは、専門的な知識のない消費者をトラブルから守るために定められた法律です。

品確法における「住宅性能表示制度」によって、客観的に住宅の性能を評価できる基準として設けられたもののひとつが耐震等級です。耐震等級は、地震に対してその建物がどれくらい耐えられるのかを表す数字になります。

耐震等級の定義

品確法では、「性能表示事項」として「構造の安定に関すること」「火災時の安全に関すること」「温熱環境に関すること」「音環境に関すること」などが定められています。耐震等級は「構造の安定に関すること」のひとつとして定義されています。

耐震等級の分類と評価方法

耐震等級は、耐震性に応じて3つのランク(1~3)に分かれており、等級の数字が大きいほど耐震性が高くなります。

耐震等級は「倒壊防止」と「損壊防止」に分けて評価されます。それぞれ想定する地震の震度が異なり、東京の場合は震度6強~7程度の地震で倒れず、震度5強で壊れない程度の耐震性を等級1と定めています。

等級2は等級1の1.25倍、等級3では1.5倍の地震に耐えられる耐震性を示しています。その他にも、建築基準法で定める「免震構造をもつ建築物」であるかどうかなども評価の対象となります。

参考:(一社)住宅性能評価・表示協会 地震などに対する強さ(構造の安定)

耐震等級の確認方法

耐震等級は、「住宅性能評価書」で確認することができます。住宅性能評価書とは、国土交通大臣の認可を受けた第三者評価機関が住宅の性能を評価し、記録した書面です。

住宅性能評価書がなくても、耐震診断をすれば耐震等級を調べることが可能です。耐震診断の費用は(一財)日本耐震診断協会のホームページによると、延床面積120㎡の木造一戸建ての場合、60~100万円とされています。

参考:(一財)日本耐震診断協会 耐震診断料金(費用)の目安

耐震と免震・制震の違い

耐震とよく似た言葉に制震・免震がありますが、それぞれどのように違うのでしょうか。

◆耐震
建物自体の構造を強くして、地震の揺れに耐えられるようにすることを指します。壁に筋交いを入れたり、部材の接合部分を金具で補強したりすることを「耐震構造」といいます。

◆制震
建物内部に制振装置を設けることで揺れを小さくする構造です。高層ビルやタワーマンションなどは上階ほど揺れが大きくなりますが、制振装置が振動を吸収して抑えてくれます。

◆免震
建物と地盤を切り離すことで、地震の揺れが建物に伝わりにくくする構造です。建物と基礎の間にダンパーなどの免震装置を設けて、地震の力を受け流して揺れを少なくします。

耐震等級の基準

「等級2は等級1の1.25倍、等級3では1.5倍の地震に耐えられる耐震性」と説明しましたが、それぞれどのくらいの耐震性を備えているのでしょうか。詳しく見てみましょう。

耐震等級1(建築基準法の耐震性能を満たす水準)

「耐震等級1」は、建築基準法で定められた「耐震基準」で、建物を新築するときに最低限の耐震性能を満たす水準です。東京を想定した場合、震度6強~7程度で倒壊しない、震度5強の地震で損傷が生じない程度の強度とされています。

震度6強~7程度は、関東大震災時の東京や阪神淡路大震災時の神戸で観測された地震の揺れに相当。実際に地震が起きた場合、倒壊はしなくても、補修や場合によっては建て替えが必要になる可能性があります。

耐震等級2

「耐震等級2」は、等級1の1.25倍の耐震性があることを示しています。災害時の避難所として指定されている学校などの公共施設は、耐震等級2以上の強度を持つことが条件とされています。

耐震等級3

「耐震等級3」は、等級1の1.5倍の地震に耐えられるだけの耐震強度です。現行の最高基準で、災害時の救護活動や災害復興の拠点となる消防署・警察署は、この基準を満たしています。

耐震等級3と耐震等級3相当の違い

住宅の建築を検討していると「耐震等級3相当」という言葉を見かけることがあります。これは、耐震等級3に相当する性能はあるものの、住宅性能評価機関からの認定を受けていない建物を指します。

耐震等級の認定を受けるためには数十万円の費用がかかるため、あえて審査を受けず、住宅コストを下げる選択をするメーカーもあります。「申請すれば通る性能は備えているけれど、申請していない」という理由で「耐震等級3相当」と表現しているのです。

「耐震性能を備えているなら、耐震等級の認定はなくてもコストがかからない方がいい」という考え方もできますが、本当に耐震等級3と同じ耐震性能なのかは素人には判断が難しいもの。また、耐震等級3相当はあくまで“自称”のため、地震保険の割引や住宅ローンの金利引き下げなどの優遇が受けられない点にも注意しましょう。

耐震等級が高い家を建てるメリット・デメリット

耐震等級は高い方がよいことは確かですが、前項の申請コストなどのデメリットも存在します。ここでは、メリットとデメリットに分けて解説します。

耐震等級が高い家を建てるメリット

メリット① 大きな地震に遭ってもダメージが少なくてすむ

もし大きな地震が起きても、大切な命や財産を守れる可能性が高いことが最大のメリットといえます。震度7が2回観測されるなど、被害の大きかった2016年の熊本地震でも、耐震等級3の住宅は「大きな損傷が見られず、大部分が無被害であった」と報告されています。

出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント

メリット② 住宅ローンの金利優遇を受けられる

住宅性能評価書が交付された住宅は、金融機関の金利優遇制度の対象となります。つまり、住宅ローンの金利が引き下げられます。例えば「フラット35」で借入をする場合、より金利の低い「フラット35S」でローンが組めるため、全体の返済額を大幅に抑えることが可能です。

メリット③ 地震保険の割引率が大きくなる

地震保険に限らず、保険は保険金を受け取る可能性が低くなるほど保険料が安くなります。そのため、耐震等級が高いほど損壊リスクが低くなるため、より大きな割引率が適用されます。具体的には以下の通りです。

耐震等級1…10%割引
耐震等級2…30%割引
耐震等級3…50%割引

出典:財務省 地震保険制度の概要「地震保険の保険料」

メリット④ 売却時に高く売れる可能性がある

耐震等級の認定を受けているということは、第三者機関による安全性が認められた建物と考えることができます。そのため、資産価値が下がりにくいこともメリットのひとつ。購入希望者の印象もよいため、希望通りの売値で売却できる可能性が高くなります。

耐震等級が高い家を建てるデメリット

デメリット❶ コストが高くなる(建築費・申請費用)

耐震等級を上げるための耐力壁や耐力金物などにより、建築コストが上がることがデメリットとして挙げられます。耐震等級1は建築基準法と同レベルのため追加費用などは生じませんが、そこから耐震等級を上げていくと、広さにもよりますが数十万〜数百万円の建築費アップとなります。

また、耐震等級を取得するための構造計算費や第三者機関への申請費用として数十万円がかかります。

デメリット❷ 希望の広さや間取りにできない場合がある

耐震性を高めるためには、建物の荷重を支える壁や柱を増やす必要が出てきます。そのため、大きな吹抜けや窓、柱のない大空間などは思い通りに実現できないことがあります。

耐震等級を高くするために必要な4つのポイント

耐力壁を増やす

耐力壁とは、建物そのものを支える壁のことです。耐力壁が増えると、地震が起きた時に建物全体をしっかり支えることができます。ただし、耐力壁の量に偏りがあると壁が少ない側に負荷がかかってしまうため、バランスを計算して設置することが重要です。

床の耐震性を上げる

いくら壁に強度があっても、床が弱いと地震が起きたときに建物がねじれてしまいます。例えば、段ボールをイメージしてみてください。上部が開いた状態では簡単につぶれてしまいますが、しっかり閉じた状態では変形しにくくなります。それと同じ原理です。

建物を軽くする

重い=強いと思われがちですが、建物は重いほど地震発生時にかかる負荷が大きくなります。そのため、建物を軽量化することで耐震性を高めることができます。

同じ一戸建てでも、1階に大きなリビング(壁が少なく軽い)+2階に個室複数(壁が多いため重い)という間取りよりも、1階に個室、2階にリビングを配置した方が建物も安定しやすくなります。

耐震に必要な設備をバランスよく配置する

柱などの接合部に耐震金物を取り付ける、壁に筋交いを設置する、壁に耐震パネルを取り付けるなどの方法で耐震性を上げることができます。また、屋根材を軽量の建材にすることで建物を軽くし、負荷を軽減する方法もあります。

耐震等級の高い賃貸住宅を建てたい方に

賃貸住宅のオーナーには、入居者の安全を守る義務があります。また、賃貸オーナーにとっての資産である建物を守るためにも、賃貸住宅の耐震性能はとても重要です。

消防署や警察署など防災の拠点となる建物に求められる耐震等級3を取得している賃貸住宅であれば、入居者が安心して住めるうえ、もし空室が出たとしても次の入居者に選ばれやすくなります。

セレ コーポレーションの賃貸住宅なら耐震等級3にも対応

「鉄骨造」に特化したセレ コーポレーションのアパート。自社工場で製造された主要構造部材を使い、自社責任施工によってつくられたアパートは、高い耐久性と安全性を備えています。また独自の構法を用いた構造では、国土交通大臣指定の認定機関である(一財)日本建築センターから耐震等級3の認定を取得しています。

耐久性・耐震性を高めるオリジナルの「新構法:セレZ」

鉄骨メーカーとの10年以上にわたる協同研究により生まれた構法で、従来に比べて約20%の軽量化と、約3.6倍の剛性強化を実現しました。また、高レベルの電着塗装による防錆加工で、耐用年数(塗膜)は約100年※を実現しています。
※電着塗装の理論値

地震の揺れを受ける・流す・支える「ハイテンション キューブシステム」

耐震等級3にも対応している「ハイテンション キューブシステム」は、以下の3つの構法から構成されており、壁・床・天井すべてに独自のブレースを配置することであらゆる方向に応力※を発揮します。
※物体の荷重に対して応じる力。強度を表す指標のひとつ

●フレキシブル バーティカルブレース:フレームにブレースを直接接合させ、横からの“力を受け止める”
●ハイブリッド ジョイントシステム :梁と柱をつなぐ接続部分で、建物に加わる“力を受け流す”
●ダイレクト パワーベース     :柱を基礎のアンカーに直接接合させ、建物に加わる“力から支える”

こうした技術を駆使してつくられる、セレ コーポレーションのフラッグシップブランド「My Style vintage」は耐震等級3を標準搭載した商品となっています。耐震等級の高い賃貸物件の建築をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

2022年の東京都防災会議では、マグニチュード7クラスの首都直下地震が発生する確率は約70%との試算が出ています。いつ起こるか分からない、しかし、かなりの高確率で起こり得る首都直下地震。その被害は最大規模であった場合、建物194,431棟、死者6,148人と想定されています。

東京圏エリアに特化したビジネスモデルを展開するセレ コーポレーションだからこそ、アパートという共同住宅の安全性を高めることは、会社としての使命だと考えています。

入居者がより安心して住み続けられることが、オーナーさまのビジネスを将来にわたり支える土台となると信じて、強くて品質の高いアパートを提供するセレ コーポレーション。ショールームでは、自社工場で製造している構造部材や壁の断面の模型などを見ることができます。ぜひお気軽にお越しください。

参照:東京都防災会議「東京都の新たな被害想定~首都直下地震等による東京の被害想定~」

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